新たな命との出会いの瞬間から、あるいは命を待ち望むときから、家族の生活とエネルギーは子どもを守り育てることに注がれます。日々の生活で子どもの成長に向き合う中で、家族は子どもと共に日々新たな発見をしています。
子どもの病気、家族を見舞うトラブル、環境の変化などさまざまなきっかけで、子どもの活動やご家族の生活の時間が、さまたげられることがあります。特に子どもの安全や育ちが脅かされる時は、家族のこころのストレスが増すときでもあります。また家族にこころのストレスがあると、育ちを見守るゆとりがなくなり、子どもの情緒や行動のあり方も変わっていきます。
このように家族のこころと子どもの育ちの問題には強い結びつきがあります。特に赤ちゃんの誕生に関連してみられるこころの問題に、マタニティーブルーズや産後うつ病などがあります。マタニティーブルーズは数日間でおさまる、涙もろさや不安・緊張など感情の動揺です。5割から8割のお母さんたちが体験し、通常は治療の必要はありませんが、それが長引いた時には産後うつ病の可能性があります。抑うつの症状で育児や家事がうまくできない、子どもとの時間を楽しめないといったことから自分を責めてしまうお母さんたちもいます。
妊娠・出産の過程はホルモンのバランスなど女性の心身に大きな変化をもたらします。生活形態も大きな転機を迎え、これに対応していくことは大きな家族の課題となります。また不安やパニック障害などさまざまな心の問題で治療を受けていた女性が、妊娠や出産に臨むこともあります。自分自身の治療とともに子どもの健康や安全な育児ができるか、さまざまな不安を持ちながら出産に臨んでいます。子どものこころの診療部では、九州大学病院内の総合周産母子医療センターや小児医療センターと連携しながら、医療の中で様々なストレスに直面する母子と家族への支援やこころの問題への対応に取り組んでいます。